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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(あ)565号 判決 1950年12月26日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人小滝新司の上告趣意第一点について。

論旨は、原判決は第一審裁判所が弁護人のした被告人の精神鑑定の申請を却下したのを是認しているが原審の右の判断は憲法三七条二項の解釈を誤った違法があると主張している。しかし、憲法三七条第二項は、裁判所がその必要を認めて訊問を許した証人について規定しているものであって、この規定を根拠として裁判所は被告人側の申請にかかる証人の総てを取調ぶべきであると言い得ないことは、当裁判所の判例の示すとおりである(昭和二三年(れ)第八八号同年六月二三日大法廷判決)。されば、所論の理由ないことは右の判例の趣旨に徴して明らかである。そして論旨中のその他の主張は刑訴法上の問題であって憲法問題ではないから刑訴四〇五条に定める事由ではないので採用することができない。

同第二点及び第三点について。

論旨第二点においては事実の誤認を同第三点においては量刑の不当を主張するものであって、いずれも上告の適法な理由には当らず、また本件には刑訴四一一条を適用すべきものとも認められない。

よって、刑訴四〇八条に従い主文のとおり判決する。

以上は、裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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